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今、何故徒弟制度か  
徒弟制度における人間性と創造性〜 
獨協経済第61号 1995年3月 紀要原文に 若干の校正をほどこし、読みやすくしました  






   

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●浮世絵のファッション性

それから、浮世絵にはファッション性というものがある。これも一つの側面として重要であると思うんですが、先ほど申しましたように、江戸は男性の多い人口構成であったために女性にもてることがこの社会における重要な価値観を持っていたと想像できます。そういうときに、春画を女性に贈るよりも、いやらしいと思われないようなものをプレゼントする方がいきなわけです。そういう中で喜多川歌麿の大首絵も発達してくるわけですが、もともと大首絵は春画の色本の中の表表紙に当たる部分であったわけです。この大首絵は女性の上半身、顔を主とした絵のことを指しているんですが、その本文に当たる部分が春画で、うしろとびらに、ついでにちょっと言いにくいんですが、大開絵(おおつびえ)と申しまして、要するに女性自身のクローズアップが描かれています。
ですから、春画の本を買った人は、表紙はどうでもよくて最後が一番見たかったという、その表紙に当たる部分、これを展覧会などで我々が喜多川歌麿の絵は大したものだと思って感心して見ながら、何で大したものなのかよくわからないで帰ってくる。実はこれはほとんど表紙にすぎないという内容です。
ところが、喜多川歌麿が大首絵の分野で画期的な創造性を発揮する。独立したジャンルとして確立して芸術性を高めていくことができたわけですが、そういう部分を江戸時代の人たちがどういうふうに受け止めていたのかと言いますと、大首絵をよく見ますと、一般的に肖像画は、その人の個性ですとか性格描写、細かい顔の表現が中心になるべきはずですし、またなっているのがほとんどである。それに対して浮世絵における大首絵は、無表情と申しますかわずかしか変化が見えない、略画化、漫画化、形式化されています。
それに対して髪型、装身具、着物の柄、これらは対照的に非常に繊細で描写が細かい。この対比が大首絵の魅力の一つではあるのですが、これを江戸市民は、ファッションとして、今どのような髪型がはやっているのか、またどういう着物、装身具がはやっているのか、そのような観点で見ていたのではないかと、想像されます。
やはり女性はファッションに対しては敏感で、こういう絵を持っていくともてたんじゃないかと思います。
ちょっと話を飛ばした部分、早すぎて聞きづらかった点もあるかと思いますが、ここらのところで話を終わりたいと思います。 (拍手)


                                  



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