有限会社 松本彫刻
高級木彫刻のオーダーメイド 有限会社 松本彫刻
松本彫刻
今、何故徒弟制度か
〜徒弟制度における人間性と創造性〜
獨協経済第61号 1995年3月 紀要原文に 若干の校正をほどこし、読みやすくしました
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●枕絵は浮世絵の本流
中にいきな人がおりまして、同じ七福神では芸がない。七福神というのは弁天様は若くて美しい女性ですが、残りの六人は男性であり、おじいさんでダサイ、中にはひとり毘沙門天のようにこわい顔をしている人もいる、こんなものをお正月に配るのはいきじゃないということから、七福神を吉原のおいらんに見立てて、豪華な着物を着せて、これを宝船の上に乗せてみたらおもしろいんじゃないかということを考えた人がおります。 豪華な衣装を着たおいらんが宝船に乗って打出の小槌を持っている。これは多分大黒天だろう。宝船の舳先に立っている船頭役、これは伊勢三郎つまりえびす様だろう、ちょっといきに振り返っておりまして、目線が鯛を向いているこれは間違いなくえびす様だというようななぞ解きですが、私もその図を見ていてどうしてもよくわからないのが幾つかある。 「これはどうも七福神に該当しないけれども、一体どうなんだ」と質問すると、「いやそれはおれにもわからない」という、なぞ解きをしながらお正月を楽しむ考え方が生まれます。 そうすると、もらった方で「随分いきな奴だな、やられた、今度はおれが仕返しをしてやろう」ということの中で、「吉原のおいらん、立派な着物を着ているのもいいけれど、脱いだらもっといいだろう」という考え方が生まれました。 江戸は参勤交代制の結果、男性が多い社会であったということが前提にありますが、それと同時に男女の情交、これはいやらしいという考え方でなくて、男と女がそういう調和に達することはまずもってめでたいことなんだ、という考え方でとらえていた。それを理解しませんと枕絵とか春画は理解できないわけです。ですから、知的レベルの高い人たちがこれを平然と配り合う。これを男尊女卑とかいやらしいというふうになっちゃうと、江戸文化はかなり遠くなってしまいます。それは「全体としてめでたい」という考え方の中で、お正月の配り物としてめでたい図柄の一つでした。 やがて、いい初夢を見るために枕の下に差し込む枕絵と、いわゆるベッドシーンという意味の枕、この二つのイメージが合体して、いきな語呂合わせという形で枕絵がお正月の初夢を見るためだけでなく独立して歩き始めた、これがいわゆる枕絵、春画の起こりです。やがてそれが一枚であったものが6枚組、12枚組と次第に豪華を極めてきます。
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