有限会社 松本彫刻
高級木彫刻のオーダーメイド 有限会社 松本彫刻
松本彫刻
今、何故徒弟制度か
〜徒弟制度における人間性と創造性〜
獨協経済第61号 1995年3月 紀要原文に 若干の校正をほどこし、読みやすくしました
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徒弟制度における創造性
● 創造性を強要する「受注生産」(パリ・オートクチュール)
このように受注生産が創造性を強要していく。この例の一つとしてパリのオートクチュールを見ていきたいと思います。もともとフランスの服飾業界も徒弟制度によって成り立っていましたが、18世紀ごろにデザイナーとしての職業が独立して分かれてくる、ここで親方、職人、徒弟という三つの段階ではなくて、師匠とその弟子、弟子の中に職人的な要素が加わったデザイン部門ができたわけで、完全な徒弟制度とぴったり一致しませんが、オートクチュールの師弟関係の中に徒弟制度の雰囲気が色濃く残っていることを、私のお得意様であるデザイナーの先生から聞きますと感じ取ることができます。 オートクチュールは高級衣装店と訳されておりますが、オーダーメイド、一人のお客さんのために一着の服をつくる、世界で一着しかないデザインの服をつくる。ですから一着500万円、一着2000万円という高い金額がつくわけで、これが二着も三着もあればこんなお金はいただくことができない。むしろ詐欺事件として訴訟問題になってしまうということになります。 毎日がただ一着の服をデザインするのが日常的な生活になっているということになりますと、男性用のネクタイ、靴下、それからコーヒーカップ、時計、何をデザインするのも新しい形態を生みだしているという作業そのものは変わらない。ですから、パリのオートクチュールを支えるデザイナーたちは、万能の天才といえないまでも万能の人といってもよろしいのではないかと思います。 そのことが注文で物をつくるということにとどまらず、高級既製服、プレタポルテの見本をつくる、それが世界の流行をつくっていくということは皆さんよくご存じのとおりだろうと思います。
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