有限会社 松本彫刻
        高級木彫刻のオーダーメイド 有限会社 松本彫刻

           
         松本彫刻          

今、何故徒弟制度か  
徒弟制度における人間性と創造性〜 
獨協経済第61号 1995年3月 紀要原文に 若干の校正をほどこし、読みやすくしました  



   
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●親方の一日は24時間

今の季節ですとショウブ(菖蒲)の花の彫刻を納品してほっとしたところです。このショウブの花を彫刻してくれという注文があったときには、ショウブの花は咲いていないわけです。少なくとも前の年、日ごろからショウブの花をスケッチし、デッサンし、そしてそれに備え、どのように造形化していくかということを考えていなければ、ショウブの仕事はせっかく注文が来てもお断りすることになってしまいます。ショウブの花は咲いているときが勝負、ということは、いつでも咲いている花を見たらスケッチしておく、デッサンしておく、そのように備えておく。それは花だけではなく、さまざまなモチーフに精通していなければなりません。またこれはモチーフだけではありませんで、ひとつの趣味というか、「好み」と申しまして、堂々とゆるぎないがっちりしたものを求める人、繊細でナイーブな感性を求める人…私どもは蔵前に住んでおりまして、おもちゃの会社が並んでいますが、幼児のおもちゃの木型をつくるというときに、赤ちゃんとか子供がどういうものをかわいいと思い、それを求めるのか。若い女性がどういうものを好み、年寄りがどのような仏壇を好むのか、というようなさまざまな好みに精通していることが、いつ注文が来てもそれを断らないで済む、受注量の確保につながることになります。
ここに極端な言い方として「親方の一日は24時間」とありますが、要するに遊んでいるときも心から楽しく遊びながら、やがてこれは仕事に役立つんだという考え方で遊んでいる。「そんなに働いてその程度の社会的地位、収入か、いやになっちゃう」と思われるかもしれませんが、実はそういうタイプの人間を徒弟制度がこしらえてしまう。何をしていてもそれが自分の仕事に返ってくるんだ、という確信を持つ。実際にはそういう仕事がないかもしれないんですが、そのような確信をもって毎日を暮らす、そういう習慣を徒弟制度がつくってしまいます。


                                  



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