有限会社 松本彫刻
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松本彫刻
今、何故徒弟制度か
〜徒弟制度における人間性と創造性〜
獨協経済第61号 1995年3月 紀要原文に 若干の校正をほどこし、読みやすくしました
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● 経営に徒弟制度の人間性と創造性を
私自身は、今から35年前、東京都立工芸高等学校の木材工芸科を卒業いたしまして、現在の松本彫刻に入門しました。 今の言葉でいうと就職ですが、徒弟制度の雰囲気が濃かったので、仕事場に入った、入門したという言葉のほうがぴったりです。 幼いときから徒弟制度の雰囲気というものを十分かみしめておりましたので、 徒弟制度をそれほど悲観的にはとらえておりませんでしたが、徒弟の時代は原則として無給であることが長い習慣になっておりました。 ですから、私自身はそれでいいとしても、それでは若い優秀な人材が入ってこない。まずもって労働基準法を守れない、そして他の産業との比較において雇用条件が悪いことは問題ですから、徒弟制度の持つヒューマンな部分、そこから生ずる創造性の部分、この根幹部分は動かさずに労働条件を改善するということで考えてきたわけです。 しかし、今こうして振り返って考えてみたときに、徒弟制度を内側から改良していくということは、なかなかきつい内容だったと感じます。 一つの例ですが、今から35年前、東京には120軒を超える木彫業の同業者が組合に準ずる組織に加盟しておりました。それが今現在どうかというと20軒余り東京木彫組合に所属しておる。つまり激減をしているわけです。 しかも、この20軒余りの事業所を一つ一つ細かく見てきたときに、いわゆるひとり親方と申しまして、徒弟も職人もいない、今の言葉で言うと従業員がいない、そういう状態です。 後継者がいない、しかもこのひとり親方が私の父の世代であるということで、急速に高齢化が進んでおります。ご高齢により廃業することは、そのまま事業数の減少につながっていくことで、徒弟制度を内側から改良していくことは、非常に難しいと感じます。 むしろ私は、近代経営の中でこの徒弟制度の創造性という部分がうまく引き継がれていくことができないだろうか。いわゆるヒューマン・リレーションを拡大的に解釈してこれを取り入れていく方法が大切ではないかと感じます。 なぜそのように感じるか、創造性というのは非常に幅広い問題ですので、この中でわかりやすい例を一つだけ考えてみたいと思います。
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